なぜ、天竜杉か?-7
2019.09.201-3、今の郷土の山の状態
では、こんなにも国の期待を集めている私たちの郷土の山は、今どんな状態にあるのでしょうか?
日本は国土の3分の2が森林、つまりは山だといわれています。太平洋戦争終了後の戦後復興期に将来の建築需要に対応するため、国を挙げての植林活動がなされました。
その結果30年後には主伐材として立派に建築材料になる杉やヒノキが育ちました。
しかしながら、戦後の高度成長経済の中でのコスト優先主義がこの立派な国産材の流通を妨げました。
人々は流通量が多く安い輸入材をこぞって木造住宅の材料に使ったのです。
この結果、森林の蓄積量は2千5百万ヘクタールもあるのに、世界中で一番多くの木材を輸入しているという変な国になってしまったのです。
日本の国内での木材自給率は、いまや20%以下になってしまいました。
これでは産業の中で林業は成り立たず衰退していく一方です。
労働別の就業者数を見ても1955年頃の山林労働者は52万人でしたが、今ではこれが7万人にまで減ってしまいました。
「人工林」はあくまで人の手が入ってはじめて森として機能する森林です。戦後植林され下草刈りや間伐を繰り返してやっと主伐期を迎えるのに、20年以上も手入れがされていない民有林が大半になってしまいました。
しかも山持ちは都会に出てしまっていたり、手入れができる人も老齢化が進み、実際に山の手入れをする人がほとんどいないのが実情です。
枝打ちや間伐作業に補助金が出ても実際にやれる人がいないのです。
この山林労働者の数が、20万人から30万人にまで復活しなければ日本の山林は維持していけないといわれています。
日本の山の荒廃は、今になって明らかになったわけではありません。
林業の危機をそのまま生活の危機としてきた林業関係者はずっと以前から「山が国や地域にとって大切な資源であること」「その山にお金が還らないから、人が去り荒廃していること」を、悲痛な叫びとして訴えてきました。
国は補助金を出して、何とか人の流出を食い止めようとしました。
心ある人はボランテイアを募り、自ら山に入り荒廃を食い止めようとしました。
林業家も過去、幾多の国産材利用の推進運動を繰り広げてきました。
しかし、それらも有効に機能することなく、現在もさらに荒廃が進みつつあるのが現状です。