なぜ、パッシブ住宅か?-20

2019.10.21
category: ブログ

まずは風の取り込み口です。
もちろん床下に設置します。

この床下給気口に仕掛けがあります。
これまで在来工法で使われていた「地窓」は、単に防虫網の付いたスリットでした。

これでは床下だけには風が入りますが、同時に床下から抜けているだけで床下だけの通気には役立っていましたが、構造体すべての通気はできていませんでした。
そこでせっかく入ったこの風を、逃さずに屋根裏まで運ぶ工夫が必要なのです。

その仕掛けが「逆止弁」です。
つまり『季の家』の給気口には逆流防止の弁が付いているのです。
振り子の原理を応用したこの弁は、入ってくる風の力だけで動き、もちろん電気も機械も使いません。
逆に出ようとする風の力で押し付けられて、弁がフタをする仕組みになっているのです。

また、基礎はベタ基礎になっていますので、いったん床下に入った空気は外気温よりも低い温度のコンクリートによって、温度が下げられます。
床下から入るばかりで出口のない涼しい空気は圧力を持ち、逃げ場を求めて上に押し上げられます。
つまり床下から1階の壁内へ、壁内から天井裏へ、天井裏から2階の壁内へ、そして屋根裏へとです。

次は風の排出口です。
当然、屋根裏のなるべく高い位置に、開閉可能な窓のかたちで取り付けます。

このとき同じ位置で、南北対象に2ヵ所以上取り付けるのが原則で、実際に『季の家』では計4箇所の設置を標準仕様にしています。
また、この開閉の動作を2階室内でできるように、ペアガラス仕様のジャロジーをチェーン操作で使っています。

さて、先ほど下からの圧力で風が上に運ばれると言いましたが、実際にはある程度の風がある日には、この排出口からの引き抜き効果のほうが高いかもしれません。

いずれにしてもこの床下の逆止弁付の給気口と、屋根裏の開閉可能な排出口によって、24時間休むことなく新鮮な涼しい空気が床下から屋根裏へ向かって吹いている状態になるのです。
この空気の移動の際に接している床面、壁面、天井面は熱を奪われます。
熱を奪った空気は暖められ対流現象によって流れを加速する側に働き、逆に熱を奪われた内装材は冷やされて表面温度が下がります。

同じ室温であっても、まわりの内装材の表面温度で感じる熱量は違います。
またその作用によって徐々に室温も変わっていきます。最初、同じ室温であってもまわりの内装材の表面温度が低ければ、室温は徐々に下がっていきます。
この効果によって、壁体内に通す風の力で室温を下げることができるのです。

さらにもうひとつ、この壁体内の通気には大事な役目があります。
常に空気が流れることで、構造材である木材を常に乾燥状態に保って腐朽を防ぐことはもちろん、表面材までも乾燥状態を保てるということです。

乾燥状態の表面材は室内の湿気を吸い取ります。結果として室内の湿度を下げることになります。
実際に夏場においては外気と約1%湿度差が生じます。
同じ室温であっても湿度が低ければ、体感気温は低く感じます。
この除湿作用がサラッとした涼感を生んでくれ、同じ気温でも涼しく感じることができます。

以上が夏場の「二重通気工法」による「パッシブシステム」です。