『個の時代』の家造り-2

どう考えるのか

 当たり前の事ですが個人の集合体である組織も、その目的を達成する手段や役割分担を考案するのは個人であり、その運営方法やマニュアルなどもすべて個人のアイデアが元になっています。

 組織というものは個人が考案したものを実現するためには多大なる力を発揮しますが、そのおおもとになるアイデアは常に個人の力によってでしか生まれてきません。
 「夢」「芸術」「美意識」「ビジョン」「世界観」「物語」「思想」「感性」等々、想像性の源泉とされる要素は管理化された組織から生まれる事はなく、自由に発想できる『個人』の能力に頼るしかないのです。

 これを建築に当てはめて考えてみれば、会社や企業という組織は規格品型の決まり切ったものを大量に合理的に造るのに適しているのに対し、現場ごとにアイデアを出さねばならない注文住宅の建築においては、考案力があるフットワークの良い『個人』の方が適しているという事になります。
 また大量生産される住宅の最初のモデルでさえ、個人のデザイン力や設計力の結集に依ってできあがっている訳で、決して管理された組織が生んだものではありません。

 ましてや建築の対象が組織の器たる事務所やビルでなく住宅の場合、それを使うのはまさしく『個人』であり使う人たちの気持ちを思いやるという行為は『個人』でしかできないのです。

 21世紀はすでに、個人の方が組織よりもチカラや可能性を持つようになっているということです。組織の大小を比較しても、小さくて何も無いような組織が簡単にできてしまうことが、大企業ではルールがあるためにできないことは驚くほど多いのです。

 そして感度の高い人から順にワクワクすることの多い外の世界に、当たり前のように出て行ってしまうし、この動きはすごいスピードで始まっています。

 これが21世紀が『個の時代』と呼ばれる所以なのです。