すべてはご家族のコミュニケーションが基本。
「心の病」の問題を「住まい」を通して述べてきましたが、住宅が直接問題の要因になっているということではありません。
家造りが影響を及ぼすのは、あくまでも親子や夫婦や子供どうしのコミュニケーションの方法にだけです。
どんな家に住もうとも、自分からコミュニケーションを取ろうと思えば取れます。
問題は間取りによって、無意識のうちにそれができる家とそうでない家に分かれてしまうということです。
特に子育ての期間においては、このコミュニケーションの方法が極めて重要なのです。
アズでは、「間」の発想を取り入れた開放的な空間を「のびやかな空間」といっています。 吹き抜けや階段室を上手に室内に取り込むことで、上下に対しても空間がつながる工夫がなされています。
この「のびやかな空間」を通して、家族の存在をニュアンスとして常に感じて生活する。
言葉のやりとりでしかできなかったコミュニケーションは、気配を感じたり存在を感じたりしていることで変化するのではないでしょうか?
「音が漏れるから不便では・・・。」とも言われますが、当然、家族それぞれが各個室にこもって、大音量でテレビや音楽を楽しむなどということはできなくなるでしょう。 しかしながら、それはお互いのことを思いやりながら生活するという、社会の中では極めて常識的な行動なのではないでしょうか?
家族の中にも社会と同じ常識的なルールは存在します。そのことを無意識に実行できることで、社会の中でも常識的な行動が当たり前に実践できるのではないでしょうか。
常にお互いの存在と気配を感じ合い、必要なときにコミュニケートする。そんな、昔は当たり前に行われていた生活パターンが、家族本来の姿ではないでしょうか。
私は、昔から行われてきたこの家族本来の生活パターンが、前述の家庭内の「心の病」を取り除くいちばんの処方箋ではないかと思うのです。
「のびやかな空間」は、そんな昔ながらの生活を取り戻すための、ささやかなお手伝いができるのではないかと期待しているのです。