なぜ、パッシブ住宅か?-22
2019.10.232-9、パッシブハウスとしての『季の家』への期待
私の提唱する『季の家』は『夏を旨とした省エネルギー住宅』です。
そのために自然エネルギーの中でも「太陽」と「風」を使うことがもっとも有効だと考えるのですが、それは私が静岡県の西部地方で住宅を供給する者だからという理由にほかなりません。
つまりこの地方は、冬場でも雪が降ることはほとんどなく、国内でも日照時間がもっとも長い温暖な地域であるということ。
あわせて夏場は高温多湿で蒸し暑いが、常に季節風が吹いている地域でもあるということからです。
パッシブな家造りをしようとするならば、まず最初に地域特性を理解しなければなりません。なぜならば、もともと家というものはその地域で生活するための器なのですから。
同じ家を北海道や北陸の豪雪地域で造ったとしたら、それは良い家と呼べるでしょうか?
極限に近い寒さの地域では、夏を無視してでも冬の寒さに対抗できる家を造るべきでしょう。
パッシブだから機械を使わないで、という発想よりも機械もフルに活用して暖房効率を上げた家のほうが、生活する人のためには良い家かもしれません。
冒頭にお話したように、あくまでも思考をパッシブにすることが肝心なのです。
「絶対にこれでなくては・・・。」「絶対にこうしなければ・・・。」ということはないのです。
パッシブシステムによって、冬場において温熱効果が高まる話をしましたが、基本的には「高断熱、高気密住宅」の改善版です。
暖房効果においてはさしたる差はありません。
むしろ冬場においては、家中の壁の中と室内が一様な温度と湿度に保たれる効果のほうが大きいのです。
それは木材を保護して長持ちする家を実現するのと同時に、室内の通気に重点を置いた開放的な間取りやプランニングを可能にするからです。
夏場においても、風を有効に使っての冷却効果は確かに高いのですが、無風状態のときや都市部の排熱だらけの立地でも有効かどうかは、疑問の残るところです。
むしろこの場合も、冷却効果よりも木材保護と表面材の吸湿性向上のほうが効果は大きいかもしれません。
つまりこの家は、抜群の温熱効果をあげることを目的としているわけではなく、『ほどほど』の温熱効果と共に開放的な間取りの実現と家の耐久性の向上を目指した家なのです。
そしてそれが私達の住む温暖な地域において、より良い選択だと考えるのです。